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医師の医行為が「傷害罪」を免れる根拠

人の体に侵襲行為(傷をつける)をすれば

刑法204条
「人の身体を傷害した者は、十年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する」

民法709条
「故意又は過失によって他人の権利を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責に任す」

でも、医師が行う医療行為であるため、その行為は「正当」として違法性が阻却されます。これを「違法性阻却事由」といいますが、 どんな場合でも違法性が阻却されるわけではありません。

刑法における規定

刑法第35条
法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

刑法第36条
急迫不正な侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

刑法第37条第1項
自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が 避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減刑し、 または免除することができる。

刑法第37条第2項
前項の規定は、業務上特別な義務がある者には適用しない。

違法性を阻却されるためにはいくつかの要件を満たしている必要があります。

「医学的適応性」があり、「医療技術の正当性」があり、「患者の同意」を得られていることが重要となります。

言い換えると、
「疾病の治療 · 軽減、疾病の予防など医療技術の適用が正当化される」場合で、「その当時の医療水準に即した医療技術」を 用いた行為であって、「患者の同意」を得ていることが必要な要件だとされています。

上記3点に不具合が見られなければ、最悪の結果を招いても罪に問われることはありません。もちろん、診察〜治療〜経過観測の段階で、 過失が認められれば別ですが。

もちろん、緊急事態など応急的な対応を迫られるケースも考えられ状況に応じて例外もありますし、患者の宗教的な理由等から 適切な治療を行えない場合もあります。

「医学的適応性」
公序良俗や社会的相当性によって議論されることが多い。医行為は人体への侵襲行為を伴うものであるから疾病の治療 · 軽減、疾病の予防など において必要なものでなければ許されるべきではないとする。時代時代で非常に流動的。

「医療技術としての正当性」
当時の医療水準を持って、適切な範囲。

「患者の同意」
治療を受け入れるかどうかを患者の自己決定権に委ねるべきであるとする。しかしながら、生命の存続において緊急な対応が必要な場合で 患者の同意を得ることが困難な場合などは、倫理的な部分から判断されることとなる。

行政不介入の原則

それぞれの内容については、社会の情勢に応じ極めて流動的であり、医療行為にあたっては、医師の裁量が大幅に認められています。 これは、医療は高度に専門的なことであるから、医療及び保健指導の内容については、その専門知識と技能を有する医師等の自由な 判断に委ね、行政庁は原則として関与しない方針を採ってきたのです。(野田寛「医事法」より)

しかしながら、昭和24年に改正された医師法第24条の2により、
「厚生労働大臣は、公衆衛生上重大な危害を生ずるおそれがある場合において、その危害を防止するため特に必要があると認めるときは、 医師に対して、医療又は保健指導に関し必要な指示をすることができる」とし、行政側が医師の医療行為に一定の介入ができる余地を 成文化しました。

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